すっかり公園の銀杏が黄色くなってきて空が澄んでいた。放課後の午後4時にまた東屋でGFを待っていた。高校2年。
付き合ってるカップルというより、ほとんど同僚のよう。。
もう夕方になって黄昏になる前つるべ落としの時期
「遅くなったな、ミチノリ」と○なえがきた。
「ああ、特に遅くもない。黄色になった銀杏をみていた。自然は贅沢なものだ」
「贅沢なのか?それで、文化の日は予定はある?」
生徒手帳を取り出してカレンダーを見た。
「11月3日は大安だな。ラッキーだ、予定はないようだ」
「予定を確認するまでもなく、手帳には何も書いてないでないか。大安もなにもあんなものは迷信だ。平安時代の公家じゃあるまいし」
「迷信か。私も実は気にしたことはない。それで文化の日は何かイベントでもあるの?デートのお誘いですか?」
「バカだな、こうやってあってるのもデートなんだよ」
「そうか。今まできがつかなかった」
「白々しい。吾妻の神社で太々神楽をやるので、それを見にいきたい。子供のころに見てまた見てみたくなったけど、他に興味のありそうなのはミチノリくらいしかいないからな」
「吾妻のどこ?」
「矢倉という駅」
「知らないな、中之条のもっと向こうかな?
('A`)いいけどさ、電車代高そうだな」
「帰りに渋川で降りて、デートとやらしてあげるわ!」
「行きますわ!」
当日になって
沼田高前のバス停で私は乗ったが、彼女は二つ前のバス停で乗っていた。同じバス停で乗ればいいが狭い町だ。あっというまにばれたら面倒くさいことになる。
「 ('A`) 行くのはいいけど、先日から神棚の祭り方で悩んでいるんだ」
と、私が言い出した。
「なんだそれ、そういえばミチノリの家には天理教の宮と神棚があるな」
「そうなんだ、あれはあきらかにおかしい。なので神棚はお父さんが死んでから埃かぶってる棚になっている。町内で配られる恵比寿大国と成田山の札置き場になっていて、いらいらする」
「それでどうしたい?」
「神棚はいらない。天理教の祭壇だけで良いのだが、8歳かそこらから観察してるが、奥の奥の奥に神の存在があるのだが神はいない。まるで空を拝んでいるようでイライラするときがある」
「変わった子供だったな」
「○なえの家の立派な祭壇をみて、これが古代神道かと思って救われた。明らかに神が降りる」
「オーバーだな。で、どうしたいんだ」
「奇想天外なこと考えるな」
「最初から神なんかいないからあの礼拝物(らいはい対象)はなんでもいいんだ。要はご神体だな」
「うちのオヤジに聞いといてあげようか?」
「そうだな、○なえのお父さんは半分神官だしな」
「そうだ、今日行く神社になんかないかな?」
「表向き普通の神道だから、神社に御札しかないぞ。まさか鳥頭宮の御札入れるわけにもいかないだろ」
「('A`)悩む」
「(^Д^)プギャー高校生の悩むことではないな。オヤジのようだ」
「笑うところではない、うちのおやめ、面倒な宗教もちこんできてこまる」
「あはは、そこから生まれてきたんだから困るな、それ」
「ああ、それを言ったら、親の親の親の親で、私で5代になる」
「・・それは、壮絶なことになるな」
「とりあえず、ご神体というのは取っておくのはどう?。ご神体は自分の信じるものしかダメだからね」
「('A`)そうだな」
「私は神道の原理をまだ知らない。○なえのお父さんに教えてもらいたい」
「ミチノリはウチのオヤジに気に入られているようだな。今時珍しい少年だと言ってる。天理教も御霊(死んだ人の靈)を大切にするから、そう悪くないと言ってるけど」
「そうなんだ。珍しいというより、本人は悩みの種だ」
「ところで、さっきの話で奥の奥の奥に神がいるって気になるな。それは何?」と、○なえが訊いた。
「感覚のことで、見えるわけではなく、奥の奥の奥に神がいていつも本心をみられてる感じがする。それはとてつもなく大きな存在」
というような話をしてたら吾妻線の矢倉についた。
祭の前で土地の人がたくさん神社に集まっていて、吾妻独特な感じのする荘厳な神社だが、古い社名だと「愛 鳥頭宮」というのだそうだ。
二人で参拝すると、まったく同じ瞬間におなじ作法をする。これは古神道なので教えられないし、教えても理解できない。
太々神楽が始まると、○なえが食い入るように見ていた。まあそれが目的で来てるのだから。
食い入るように見ているので、そのまま放置して駅からくる途中に和菓子屋があったので行って、和菓子を数個買ってたり、社務所にご神体となるものはないかみてから、戻った。
「あれ、ミチノリどこに行ってた。気が付いたらいないから神隠しにあったのではないかと思ったぞ」
「ほれ、和菓子買ってきた」と渡す。
「最初の祝詞はなんて言ってた?」
「ああ、あれか。『思うこと、皆つきねとて
麻の葉を、切りにきりても祓つるかな』と言っている」
「ちょっとまって、生徒手帳にメモしとく」
「(゚д゚)珍しい。初めて手帳を使うんだな」
太々神楽が終わっていた。
不思議に胸に残っている。ゆったりした気分になった。
「('A`)ご神体のことだけど、さっき社務所いったらそういうのないのな」と私が言った。
「ないだろ、あ、そうだこれでも入れておけ」
と言って、足元に転がっていた丸い石を取って手渡した。
「(゚д゚)石?ですか??」
「そうだよ、昔は石を祀っていたことからはじまって、そのうち神社の石を拾ってきて祭壇の中央に古代神道はしていたそうだ」
「女子高生なのになんで知ってるんだ?」
「知るつもりはなが、子供のころからオヤジが楽しそうに話しているのを聞いてたのでね」
「(゚д゚)それいいかもね。お金もかからないし」
「うちでよく洗って塩で清めてから入れ替えちゃえばいいよ。責任は持たないけどな。何が起こってもあたしに文句言わないでね」
続く。